無縁社会 無縁死三万二千人の衝撃

NHK無縁社会プロジェクト取材班
ISBN:9784163733807

32000人

 引き取り手の無い遺体が、年間32000人いらっしゃるそうです。確か年間の自殺者の件数もほぼ同数だったと思います。無縁社会という言葉はおそらくNHKの造語でしょうが、天涯孤独で孤立している訳ではなく、親族や親きょうだいがいるのに引き取らない、または引き取られるのを拒む、そういう関係はまさに縁が無い社会と言ってよいと思います。

 私は貧困はなぜ起こるか、どうすれば無くせるかなどについて知りたく、色々と本を読んできました。今回この本を読もうと思ったのも、貧困の果てに孤独な死があり、引き取られること無く葬られる無縁墓地に埋葬されるというつながりがあると思ったからです。

迷惑をかけたくない

 この本に登場される方々は、人生を一生懸命生きているごく普通の方々です。一生懸命生きているからこそ、他人に迷惑をかけたくない、そういう思いが人一倍強いのだと思います。私も常々、子供たちや私の姉に、将来健康上の理由など何かあっても決して世話をかけなくない、そう感じていましたし、今もそう思っています。

 自己責任という言葉が便利に使われるようになってから、私たちは人生における困難をビジネスライクにお金の力で解決することを考えるようになって来ました。誰かに頼って、やってもらっても、恩を着せられて肩身が狭い、もし失敗しても文句も言えないし、関係も悪くなるし、それならいっそ業者にお願いしよう そういう思考回路が働いています。

ラテン系、真逆の社会

 自転車で世界を2周した冒険家である中西大輔さんは言っていました。「南米やアフリカは、困っているとみんなが助けてくれる。自分たちも貧しいはずなのに、ご飯を食べさせてくれる。汚い格好で自転車に乗っていても、声をかけてくれるし、応援してくれる。ヨーロッパ、特に北欧はまったくその逆で、道路を走っているとクラクションを鳴らされるばっかりで困る」と。幸福度世界一を謳うブータンが目指すのも、おそらく無縁社会の真逆の社会なんだろうと思います。

 経済が発展しちゃったから仕方ない とかでなく、自分が今生きているのはみんなお互い様なんだからね と胸を張ってみんなが言える世の中にしたいですね。そうそう、無縁社会に関するNHKスペシャルが今夜放映のようです。なんという偶然。